詩集「聞こえないハレルヤ」から






こわくてあなたはふるえていた

よくわからないし、苦手だし、初めてだし……

それでもそうするしかないとわかったとき、

あなたはふるえながら一歩をふみだした



そのとき星々は何を思っただろう?



あなたが砕け散った後も

あなたのぐしゃぐしゃにつぶれた頬と

そこにこぼれた涙がよく目に浮かぶ




星々は人間の思いを吸って

いったい何を思っているのだろう




次は私の番だ

こわくとも、ふるえていても

そうするしかないとわかったので

私も一歩をふみだすだろう




星々が輝くからではなく

砕け散り、崩れ落ちた幾人かの人を目にしたゆえに

ただそれゆえに

私もふるえながら一歩をふみだすだろう




怖さも、不安も、矛盾も

何ひとつ、なくならない

でも私は星々の下

その輝きをちがう目で見ている



星よ、砕け散る人間に、いま、何を思う?


















触っても触っても

触りつくせないものに

私は泣いた




私はあなたの皮膚に

触れてさえいないのに

あなたの魂にじかに触れている





ああそうだ
私が去るので
   輝きが増す




あなたと見た朝日

陽が昇る前の

暗い胎動





つぶったまぶたに

   何度も何度も

      陽がのぼる













さらりとして

ざらりとして




すべきことがなくなったとき

あなたは目をつむった

私に見えたのは後ろ姿だけだった




ずっと目をつぶっていた

そしてもう一度

立ち上がった

信じられないほど力をふりしぼって立ちあがったはずなのに

あなたの足取りは軽やかだった





私はもう
止まっている光を信じない





目をつむると

あなたのハミングが聴こえる

これから出かけるところは凄惨なところなのに

あなたは木漏れ日に

木々に

風に

楽しそうにあいさつする

私に見えたのはその後ろ姿だけだった






しずかで

無口で




空が澄み渡る













水色の空が目にしみる

空を見ていたら

 涙がおちてきた

横たわると

 空がおちてきた





幸せでいっぱいのはずなのに

  ささいなことが胸に刺さる




















昔なのか、今なのか

あなたはどこへ行きたいのか?

傷つけたのか、傷つけられたのか?

裏切ったのか、裏切られたのか?

愛を目の前にしてなぜ心沈むのか?

したことと、されたことが簡単にひっくりかえる

私は太陽の中に入りたいのに

死が

私を迎えた















目に見えないもの、不確かなもの

見ようとすれば 不安になり

掴もうとすると 怖くなる

私のいのちは あとわずかだというのに

確かなものは何もない

見渡せば ひとり

これでいいのだと言ってくれる人は誰もいない

死ぬというのに掴んだものは何もない

どこへ行くのかも、どうなるのかもわからない

ささいなことにこだわって

つまらないことにうつつをぬかした

死ぬ身だというのに









待っていた

待っていたが何も訪れなかった

待っていた

一歩も歩めないまま

待っていた

何を待っているのか、わからなかった

何かがやってくるのを

決定的なことが起こるのを

待っていた

十分に待って

十二分に待って

待ち続けて……

いつも焦っていた

こんなんじゃないと思っていた

朝日が部屋にながれはじめた

光の中には

私の人生が流れていた







待っていたものは 私の人生の中にもうあった

私の人生

私のひと呼吸、ひと呼吸、

その中に光があった

それを知らない私の息は

暗く、哀しいものだった

こんなに光にあふれているのに



さいごのさいごに

人が思うことの中に、

もうすべてはあったのに

私は待っていた

人である端切れを

つかんだまま

待ち続けてしまった

立ち上がるのも忘れて




チルチルミチルの青い鳥

探しているものはいつだって

遠くにはないのに






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