詩集 いななき から









いななき






あなたを思うと

私は私になる前の、魂の

いななきを耳にする

その声でしか私は

あなたを

呼ぶことができない





しかし、ふりむいたあなたの瞳は

答えていた

あなたの声は

聞こえるけれど……

そのさきは

袋小路

あなたも私も

霧の中














わたしたちの肉体は

夜になると白く光る。

そして、わたしたちにもわからない

ことばで語る。

そのことばの重みに耐えられぬ者は

決して少なくない。

彼らは幸せを掴むには弱すぎて

自らの重みに

名もないことばに

ほろびていった。




彼らの墓には目印もないので

花も飾られず……

誰も訪れぬまま朽ちていく。

持ち主を失った、彼らののどが

ひょうひょうと

笛のように鳴る。






わたしたちの肉体は

語り続けている。

昼も夜も

眠るときも目覚めのときも

わたしたちにはわからないことばを

発しつづけ

語りつづけている。














いましかないので

わたしはないた

いましかないので

わたしはわらう

いまだけしか

わたしには

みることも

さわることも

できない

いましかないので

わたしは

あなたに

さわろうとする





いましかないもののなかに

なにがふくまれているのか

わからないので

なくことも

わらうことも

うとましかった



















私の影は

 私の背後に

   いつもくらくおちる。

ふりむくと影は

大きく揺れる。

うつむけば 影は

心の隣に そっと

腰をおろす。

















孤独の夜には

 うたごえがする

 ひとりの夜を

 声が通りぬけていく

 時よりも重く

 ことばよりもつよい

 輝きが

 かけぬけていく……

 ひとりの夜















もしも命を

手にとることができるなら

きっとそれは……

きっとそれは 花に似ている

咲けば花

咲けば花だが

咲かなければ

腐肉にとても似ている






世界は一度 壊れたのではないだろうか。















あなたは私の心に

哀しみを埋め込んだ。





哀しみは不思議な宝石に似て

私から何も欲さず、何も与えない。

みつめられると輝いて

しかし 最期には

私の血で 紅く染まろうとした。

















いのちは かけごとに似ている。

わたしはおまえとかけごとをしている。

ついても、つかなくてもいけない

ランプを

消さないようにしている。






そして詩は

嘘に似ている。

本当の事が翼をつけて

飛んでいく方へと

ことばが追う。






わたしのいのちは

見えなくなった星のように

おまえとかくれんぼしている。













久しぶりだね。

久しぶり。





それから。

それから聴こえたのは銃声。

それで人生が終わるのなら

それでもいい。






今日 私は 飛ぶ。

























追いかけても

捉えようのない

あなたの影を求めて

私は蝶になる。

追いかけても追いかけても

逃げていくあなた。

追いかけるので

逃げていくあなた

けれど私は

世のはかなさの中で

あなたを失いたくないために

追いかけるしか

求める術を知らない。











HOME