詩集
 「光の中で君は泣き」から
 















ひとのいのちの不思議を思う

いままで動いていたひとが

動かなくなる。

もう二度と、意志を見せることがないなどと、

思いさえしなかった。

私はフソンな人間なんだろうか?





YES.

私はフソンな人間なんだろう、

たぶん。







 砂漠の水









1

たった一枚の、最後の写真

みんなこっちを向いている
















2

お母さん

あなたの白い骨がみえる、

ゾンビのように




うつくしい、ゾンビ

















3

あたりまえのように

頬をよせあう






うらやましく、うつくしい光景

そんな簡単なことが

私にはできない




今ここが暗闇だとしても



闇に浮かぶ

ほほえみ


















4


私の体から光が

私から光が

勝手に溢れてくる






ハレルヤ 砂漠の




















  もっともおそろしいのはわたし

いちばんたいせつなときに うらぎる
















私は自分の保身のために5ミリメートルものをずらして

平気でいた。そのせいで私のいちばん大切にしている人が

死んだ。忘れることにした。なかったこととして、自分の中で

処理をした。



















私は山にひとりでこもり、生き続けた。

目の前を通り過ぎるすべての輝きが、目にうつらなかった。










この世がこの世である限り


決して報われないものがある


わたしも


それを愛している








  分身





とけあえず、つかみきれず

理解できない、

あなた

あなたはただそこにいる

影のように

それがあなた

それはわたし






私の歩むところにしか

あなたは来ることができない

あなたのひきずるものしか

私の手持ちはない

あなたの顔が見たくて

私の十本の指は小さな目になる

ひやりと走る

触覚







触れているだけで

見ることのできないあなた

それはわたし

それが、

あなた






なぜだろう、あなたは、

あなたは全能なのに、

驚くほど無力だ


















夜が更けてゆき

光も灯りも地上から消え

多くの人が憩い、眠るとき

吹き荒れる嵐が

扉をこじあける。







眠っている時にこそ、

闘いは行われる。

眠るあなたの、その

まぶたの裏に戦場がある。

知らないのは、自分だけ。







夜の闇の中で

ひとり目を覚ますとき

心臓が恐怖で早るのは

ひとえにもふたえにも

そのためなのだ。

光に恋い焦がれ

朝の光を待ちながら

なんとか朝まで

なんとか空がすーと白むあのときまで

なんとか持ちこたえようと

魂はひとり

戦場で息をひそめている







今日もまた日が暮れて

光の天使は地上から

天へ引き上げるだろう

今日もまた

夜更けの闇に

声をあげることもなく

ひとりぼっちの魂は身を横たえるだろう

それが戦場だとも知らぬまま。






知らないのは、自分だけ。

吹き荒れる風が

今日もまた扉をこじあける。









      光の中で君は泣き





かじかんだときのことを

君は憶いださないのか

君は君だけになったとき

おそろしくてふるえた。

なにもないことに打ちのめされて

誓いさえ、したではないか。






昼下がりには魔女たちがおしゃべりする

君は再びひとりになる

昼寝という、束の間の、あの世

助けてくれ






問題は君が忘れてしまったことだ

何が君のもので

何が与えられたのか

君はいまに すべてを 返さなくてはならない

その服も、その爪も、その髪の毛の一本に到るまで

君ではなくなる






君はがんかもしれないと言われた時

まっくらになるのを感じた

感じた、だろう?

それが君なのだ。

その服も、その髪も、その指輪もすべてなくなって

太陽も月ものぼらない場所へ

君はその時行った。

恐ろしかった

怖かった

暗かった







そのとき 君は 何をした?

地面さえ、君のものではなかったから

失われた場所で、君は何の上に立とうとしたのだろう?

立ち上がろうにも地面のないとき、君はカタカタと

おもしろいように 震えたじゃないか?

その時、君は思い出さなかっただろうか?

君の、数人の、友だちを。






そう。

彼らの一人一人を私は思い出した。 

それが私の、小さな大地だった。

その時近づいてきたものがあった。

音もなく、はっきりと、すみやかに現れて、

それは私の前を通り過ぎていった、

左から右へ、ゆっくりと。

私はその顔を見たかった。

しかし顔を上げることができなかった。

どうしても できなかった。

いや、うつむいてはいなかったが、

私にはその顔が暗すぎて見えなかった。

しかしその暗い顔を見たとき

私は知った。

いま通り過ぎたものが死であることを。

誰かの死ではなく

私自身の死であることを。

それはもう一度私をおとずれる。

私は見た。

そう、

私は死ぬのだ、いつか、必ず。







と、君ははっきり知ったのだ。

でも君はそれだけではなく、他のことも

あのことも、このことも、忘れてしまったようだ。

なぜだろう?

君は忙しいのかい?

君の心は亡びてしまったのかい?






光の中で君は

泣いていた












HOME