朗読について その1 息の切れ目が意味の切れ目
ヴォルテのレッスン体系を御覧いただくと、入門の素話が終わり、次に位置するのが朗読です。朗読と素話。どう違うのでしょうか? さまざまなお話会で独自に定義しているので、まずヴォルテではどう扱っているのかをお話しします。
素話も朗読も、昔話、グリム童話、世界のお話などを使用します。双方、3つのことばの世界(お話、演劇、詩)の中のお話の世界に相当します。ヴォルテの最初のクラス(入門・初級)ではお話しの世界から学びます。素話ではあらすじのみを用いて、テキスト通りにならなくてもいい。そのかわり、しっかりと自分で消化したお話(の筋と魅力)を、相手に伝えようとして贈り物にしよう、ということに焦点をしぼります。
朗読では、テキスト通りに話しながらも素話同様のことを行います。素話に関してはニュースレターで既に取り上げていますので(NO.13,
NO.21, NO.22)ここでは朗読についてご紹介いたします。
といっても、最初からがっかりさせるようで申し訳ないのですが、朗読の場合はお話によって注意事項がかなり異なります。講座の内容は、素話では、どのお話にも通用するステップを身に付け、話すことそのものを学ぶのに対し、朗読クラスではステップそのものはあまりなくなります。朗読できるように訓練することそのものが、ステップになっています。
紙上では講座の内容をお伝えすることは不可能なので、一般的なことに制限し、今回は気をつけるだけで、ぐっと違ってくる朗読の秘けつをお伝えします。
まずは謙虚に、句読点
練習できない時は以下のことに気をつけて、表現だの、思いだの、大それたことを言わずにまず一歩下がって、文章に場所を与えるようにしてください。
私達はついつい、形にする努力をしないまま(つまり稽古もせずに)自分の感じた事だの思いだのを、そのままぶちまけようとしてしまいがちです。それでは文章がつぶれてしまいます。そのままぶつけるのではなく、練習して行く中でしか表現は生まれません。練習を出来ない時は句読点に気をつけるだけで、ぐっと聴き易い朗読が可能です。
句読点の意味
書いてあるものを声に出して読む。それは身体を通すこと、身体を立ち上げることに他なりません。
自分で読めるのに、わざわざ誰かに声に出して読んでもらう意味はどこにあるのでしょうか? そこにはもちろん、誰かが読んでくれることそのもに付随するぬくもりや空間がありますが、ここでは句読点にしぼって考えたいと思います。語り手が句読点を守って読むと、意味がそのまますっと聞き手に入ってきます。
読点の区切りは、意味の区切りになります。音読化された一つの文はひとつの流れとして聞こえてきます。そこに区切りを付けてくれるのが句読点です。
1 読点「、」と句点「。」の区別を付けて読んでいますか?
私達は忙しい生活をしているので、ときどき、読点「、」と句点「。」の区別を作る事ができず、すべて読点のようになってしまいますが、「、」と
「。」では区切りの長さ、そしてそこに生じる重さが違います。練習していく時には、次に話す内容を球形が準備する間が、ここになります。
2 読点「、」と句点「。」を守って読む
読点「、」で意味の流れが違います。以下の三つの文章、句読点に忠実に読んでみてください。
おじいさんは、おばあさんと二人きりで暮らしていました。
おじいさんはおばあさんと、二人きりで暮らしていました。
おじいさんは、おばあさんと、二人きりで暮らしていました。
誰かに読んでもらって聞いた方が分かりやすいのですが、聞き手は読む時に生じる重さ、流れの区切りを体験しています。読点によって文の流れが変わってきます。確かに三つとも文の情報は同じですが、流れは違います。
「情報が同じなんだから、どうでもいいではないか」と言ってしまうと音読する意味がなくなります。聞き手は流れを体験し、聴いた瞬間にすーっと意味を受け取ることができます。文の流れの区切りや重さを、身体で感じています。音読は身体で感じ取るもの。そのためには身体を通して音読することを学んでいくことが必要になります。意味は、流れの区切りを通して身体で直接感じるものになります。
身体を通して立ち上げた文章だからこそ、誰かに読んでもらう意味が生まれます。身体性を通したことばは、身体で受け取ることができる。身体を通して感じることができるものをたくさんもらう。少し話しは脱線しますが、身体つくりの時期にいる小さな子ども達のためにお話が必要なのは、そのためなんです
ね。
3 読点を打ち直す
たいがいの文章は読点が多すぎます。それは実際に音読しないで書いているせいだと思われますが、そのまま読むと流れが切れ切れになってしまいます。そこで文章を音読しながら、読点を打ち直してください。
4 最後に、句読点を守ってもう一度読んでみる
これで三回ほど音読したことになります。明日とつぜん何か朗読しなければならない時、このステップを試してみて下さい。あるいは夜、子ども達に本を読んであげる時には、句読点を守って読むだけで違います。
練習を通してしか本来は立ち上がらない空間なのですが、練習できないときも、謙虚に句読点を守って読む事で、聴き手のために場所をつくることができます。